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Part4 決算診断編

決算書を読みこなす力を身につけよ

 決算書には、経営計画をつくる前に参考にすべき情報がたくさん載っています。よって、経営者が決算書を理解できるか、できないかは、その会社の成長を大きく左右します。
 ただし、決算書をみて前期の反省ばかりしているのはどうでしょうか。売上が思ったほど伸びなかった、利益が減ってしまった、こんなに経費を使っていたのか……と、個々の数字にとらわれて気にしても始まりません。大事なのは、決算書という資料をもとにして会社全体の姿を的確にとらえることです。
 経営者は、貸借対照表や損益計算書の中のどの数字をみるべきか、何と何を比較するのか、そこから何がわかるのかを知っておけばいいのです。
 目的はあくまでも会計数字から今の会社の体力を知るということです。

さらに詳しく⇒『【4-32】決算書で会社の体力を知ろう

決算書の状況を数字で表している

 決算書は、お金という切り口から会社の状態を表しています。決算の時点での資金は十分か、1年間でどれだけ利益が得られたかがわかり、会社が健全な状態か、問題を抱えていないかどうかを示してくれるものです。
 決算書は複数の書類によって構成されていますが、主なものは「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つです。
 貸借対照表は、決算日における会社の資産状況を示しています。表の左側(資産)と右側(負債+純資産)を上から足した合計額が同じになるので「バランスシート」(B/S)ともいいます。
 損益計算書は1事業期間(通常は決算日までの1年間)で得た売上高と利益(または損失)を表しています。
 キャッシュフロー計算書は、1事業期間でキャッシュ(すぐに使えるお金)がどのように動いたかを示しています。
 このほかに、利益をどのように使う予定かを示す「株式資本等変動計算書」、会社の活動状況を文章で記す「事業報告」と「注記表」を含めて決算書と呼ぶのが一般的です。

さらに詳しく⇒『【4-33】決算書の構成はこうなっている

経営計画で重視する利益がわかる

 損益計算書は、決算日までの1年間で得た売上と利益、それを得るために必要とした経費などを記したものです。基本的には売上が一番上にあり、そこから経費を引いてさらに各種の損益を加減し、一番下に当期利益が算出されるという構造になっています。
 前項で経営計画は利益計画でもあると述べましたが、損益計算書は利益について記したものですから、経営計画を立てる前に、必ずみなければならない書類のひとつです。損益計算書には「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期利益」「当期利益」の5つの利益が書かれています。
 まず売上総利益は、売上高から仕入などの売上原価を引いたものです。
 営業利益はそこから「販売費及び一般管理費」を引いたもので、商売(本業)でその年度にどれだけ利益を出したかがわかります。
 経常利益は、営業利益に「営業外収益」を加えて「営業外費用」を引いたものです。会社全体でどれだけの利益を得たかをみる基準となるのがこの経常利益です。
 経常利益にさらに「特別利益」を加えて「特別損失」を引いたのが税引前当期利益です。税金を算出するため、通常なら発生しないような特別な損益も計算に入れたものです。
 そこから税金を引いたものが、当期利益です。これが、会社(具体的には社長や出資者)が自由に使うことができるお金になります。

さらに詳しく⇒『【4-34】損益計算書からわかること

「流動とは1年以内に現金化できる」ということ

 中小企業では、すぐに支払いにあてられる資産、特に現金があるかどうかが重要です。貸借対照表でも、最初に左上の「流動資産」をみてみましょう。
 流動資産の中でも現金化しやすいのが、当座資産と呼ばれる「現金預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券」です。いわゆる運転資金として使えますが、現金預金以外の受取手形や売掛金は、いつ現金化できるかを把握しておく必要があります。「棚卸資産」はいわゆる在庫で、そのうちには現金になるはずですが、支払い資金としてはあてにできません。
 右側の「負債」も、上の方の「流動負債」からみます。「支払手形」「買掛金」「短期借入」は、どれも早く支払いをする必要があるので、これが多いと現金が出ていきやすい状態といえます。
 流動負債に対する流動資産の比率(「流動比率」については100ページ参照)が小さいと、手元の現金が不足する可能性があるので注意する必要があります。

さらに詳しく⇒『【4-35】貸借対照表からわかること

決算書は過去と比べることに意味がある

 決算書を一期分だけみても、会社の状況の変化は浮かび上がってきません。過去四期分の数字を比較することが非常に大切なのです。これは自分の体について調べるときと同じです。体脂肪率がこれだけあるから肥満気味だといわれたりしますが、人によって適性体脂肪率は違うものです。数字の変化を知ることで、はじめて今の状況がわかるのです。
 会社の経営状況はすべて勘定科目に表れるので、まずは、社長が決算書をみる習慣を身につけることです。
 決算書をみるポイントは2つあり、ひとつ日は収益性で、2つ日は成長性になります。したがって、単年度の決算書だけを眺めていても、答えはみつかりません。そこで過去の決算書を並べるわけですが、左の図のように、構成比や増減をみることによって、今の会社の健康状態がみえてくるのです。

さらに詳しく⇒『【4-36】四期分の損益計算書を比較する

まず純資産の増減を確認する

 四期分の貸借対照表については、左の図のようにまとめるとみやすくなります。一番右には前期に対する当期実績の増減分を入れ、数字の増減をみやすくします。
 さて、主な勘定科目について、数字の見方を簡単に説明していきます。

@純資産の推移
 最初に、純資産の増減を見ます。
 純資産は資本金、資本剰余金、利益剰余金の合計で、借金と違って返す必要のない資金(自己資金)です。中小企業では増資をする場合はほとんどないので、利益剰余金、つまり会社に最後に残った前期の利益が増えたときに純資産も増えます。よって、純資産が増え続けていれば、利益を出し続けていることになります。
 一方、純資産が減っていれば、損失が生じていることになります。過去の利益や資本金を取り崩して返済にあてている状態ですから、これが続くと自己資本が減り続けます。最後にゼロかマイナスになれば、実質的に破産状態です。
A現金預金(運転資金)の推移
 一般的に中小企業では現金預金が主な運転資金となります。現金預金の残高をみると、経営状況も把握できます。極端な話、現金預金がゼロになると会社経営はできません。
 現金預金が少なくなる理由として、売上が増えていない、変動費や固定費がかかり過ぎている、売掛金を回収できていない、買掛金の支払いに追われている、借入が多額で利息の負担が大きいなどのケースが考えられます。
 売上や利益と関係なく、資金バランスの関係で現金預金が少なくなる場合もあります。
 もちろん運転資金は減っているよりも増えている方がいいので、金額だけでなく増減もみます。前期より大きく減っていたら、原因を確かめるようにします。
B借入金の推移
 借入金が増えるということは、利息返済額も増えるということです。現金預金が減少する理由になるので確認しておきます。
C売掛金・買掛金の推移
 売掛金の増減は、損益計算書の売上高とあわせてみます。売上が伸びれば売掛金も増えるのが普通ですが、回収が遅れた結果として売掛金が増えると、現金ショートにつながる危険があります。
 買掛金も損益計算書の仕入とあわせてみます。仕入が増えれば買掛金が増えるのが普通ですが、支払いが滞っているのなら問題です。
 なお支払手形についても、買掛金と同様のことがいえます。
D棚卸資産の推移
 売上や利益がそれほど変化していないのに棚卸資産が増えていたら、デッドストックになっている可能性があります。在庫状況を確認しましょう。

経営計画策定に関するお問い合わせはこちらから

さらに詳しく⇒『【4-37】四期分の貸借対照表を比較する

経営に負担をかけているのは何かを把握しよう

 決算書の数字を利用すれば、@〜Jのことがわかります。どれも会社の状況を把握するために大切なものなので、活用をお勧めします。
@預借率
 借入金・割引手形に対する現金預金の割合。会社経営にとって重要な現金預金と借入金のバランスをみます。借入金を返せない危険性を判断するものといえます。
A売掛金の回収日数
 1日の売上高に対する期末の売掛金残高の割合。売掛金の回収にどれぐらいの日数を要しているのかをみます。売掛金の回収日数が長いほど資金負担がかかるだけでなく、不良債権化する傾向にあります。
B在庫日数
 1日の売上高に対する期末の在庫額の割合。在庫日数が長くなるほど不良在庫になります。また在庫が増えることは資産が増えることになるので、金利負担増を招きます。
C借入金対売上高比率
 売上高に対する借入金の比率をみます。借入金が適正水準かどうかを知るためにチェックします。
D年間必要売上高
 販売費および一般管理費(固定費)をまかなうために必要な、売上高の最低水準を知ることができます。
E現金預金比率
 売上高に対する現金預金の比率を出し、1カ月ごとにその推移をみます。現金預金の推移を知ることが経営には必要です。
F売上総利益率
 売上総利益が売上全体にどれだけの比率を占めるかをみます。経営が健全かどうかを知る上で非常に大切な指標です。
G一人あたりの月間人件費
 従業員の増加や賃上げなどによって人件費が増加すると、固定費の増加と売上総利益の圧縮につながるので、人件費の変動は毎月追いかけるようにします。
H役員給与推移
 たとえば、四期分を比較した場合、役員給与の増減があるか、あるいは未払いになっていないかどうかも把握する必要があります。
I仮払金
 決算書に仮払金が残っていたらおかしいと考えます。もし計上されていたら、その中身を確認した上で決算書を見直さなければなりません。申告をお願いしている税理士さんからの指導がなければ、我理士さんを変えた方がいいかもしれません。
P貸付金推移
 貸付金がある場合は、誰に貸したものなのか、返済の見込みがあるのかどうかを常に確認します。回収見込みのない貸付金は、税理士さんに相談して対応しましょう。

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さらに詳しく⇒『【4-38】決算診断で経営体質を把握する

会社をみるポイントを知ろう

 経営計画を考えるとき、決算書に記されているさまざまな数字の中で、どれに注目したらいいのでしょうか。
 本書では 「収益性」「資金性」「安全性」「安定性」「生産性」の5つのポイントに注目します。そのポイントについてわかりやすく示す経営指標(数値)は次のとおりで、これらをみれば会社の体力がわかります。
@「収益性」→総資本経常利益率をチェック
 ……効率よく儲けているかがわかる
A「資金性」→流動比率をチェック
 ……返済能力に問題はないかがわかる
B「安全性」→自己資本比率
 ‥…つぶれないだけの体力があるかがわかる
C「安定性」→安全余裕率をチェック
 ……安定的に収入を得ているかがわかる
D「生産性」→労働分配率をチェック
 ……人件費に問題はないかがわかる
 それぞれのポイントについては、次からの項目で詳しく見ていきます。

さらに詳しく⇒『【4-39】5つの経営指標を計算しよう

「総資本経常利益率」から会社の収益性を分析

 収益性とは、「元手に対してどれだけの利益を得ることができたか」ということです。会社の元手となるお金をすべて合計したものは「総資本」で、貸借対照表に「負債・純資産合計」として載っています。総資本に対して得られた利益の比率が大きいほど、収益性が高いことになります。ここでは営業外利益と営業外費用も算入した「経常利益」を使って、総資本に対してどれだけ利益があるのかをみます。
 もし総資本経常利益率が1%未満だったら、元手をほとんど有効活用していない状態です。少なくとも元手に対して市中金利以上の利益を上げられなければ、会社を経営する意味がないといっていいでしょう。
 総資本経常利益率は、一般的な企業では5%前後であれば普通といえます。
 ただ、すべての経営指標にいえることですが、どの程度の数値が適正値なのかは業種や会社の規模によっても違ってきます。

さらに詳しく⇒『【4-40】収益性・資金性とは?

「自己資本比率」から安全性を分析

  自己資本比率は、「総資本」に対する「自己資本」の割合をみたものです。銀行の安全性を示す指標としても使われているので、耳にしたことがある人も多いでしょう。自己資本は貸借対照表の右下にあります。この数値が高いほど安全性が高い、つまり会社がつぶれにくいといえます。
 なぜ自己資本比率が高いと安全なのでしょうか。貸借対照表の右側をみるとわかりますが、自己資本が多いということは、その分借入金が少ないことを意味します。借入金が少なければ金利負担は少なくて済むのです。
 また自己資本には、会社に最終的に残った利益(損益計算書の「当期利益」)が組み込まれていきます。利益が多いと、その分自己資本も増えます。利益をたくさん上げれば自己資本が増えるので、儲かっている会社の自己資本比率は高くなっていくのです。

さらに詳しく⇒『【4-41】安全性・安定性・生産性とは

売上から変動費を引いたものが眼界利益である

  限界利益は「売上高−変動費」で求められます。会社の利益をみる指標のひとつですが、損益計算書には出てきません。
 変動費は「仕入十外注加工費」のことです。このうち「外注加工費」というのが損益計算書では表しにくいので、限界利益を載せている決算書はほとんどありません。なお製造業では外注加工費がかかることが予想されますが、流通業などの非製造業ではほとんどかからないため、変動費と仕入がほぼ等しくなります。したがって、非製造業の場合、限界利益は損益計算書の「売上総利益」とほぼ同じとみてさしつかえありません。
 限界利益は、会社の利益を知る上で非常に重要な指標です。経営は売上を増やすことよりも、まず限界利益をいかに大きくしていくかを考えることといっても過言ではありません。経営計画で「利益をみる」というとき、まず最初にみるのは限界利益だということを覚えておきましょう。

さらに詳しく⇒『【4-42】 限界利益を見落とすな!

キャッシュとは何か

キャッシュは通常、現金と同じ意味で使う言葉です。しかし、決算書における「キャッシュ」の意味については、おそらくほとんどの経営者は知らないでしょう。
 キャッシュを日本語に訳すと「現金及び現金等価物」となります。「現金」には、文字どおりの現金のほかに当座預金、普通預金も入ります。「現金等価物」は会計上現金とみなされるもので、3カ月以内に満期となる定期預金、短期手形、コマーシャルペーパー(CP)、公社債投信などです。
 よく年度末に「税金を払わなければいけないのに足りないので困っている」といっている社長の話を聞きます。これは会社のキャッシュの状況を把握していなかったためです。 キャッシュフロー計算書は、キャッシュが一定期間内(通常は1年度分)でどれだけ増えたり減ったりしたかを示す帳票です。 これをみることでお金がどのように会社を出入りしたかがわかり、自社におけるキャッシュの流れの傾向をつかんでおくことができます。

さらに詳しく⇒『【4-43】キャッシュフロー計算書とは?

キャッシュは多ければ多いほどいいわけではない

 キャッシュフロー計算書上の3つのキャッシュについて、さらに詳しくみていきます。
 営業活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、利益を得たことで会社にキャッシュが入ってきたことを示します。マイナスの場合は利益が出ていないので、会社の経営状況はよくありません。
 投資活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、それまでに投資した固定資産や有価証券などを売って、会社にキャッシュが入ってきたことを示します。必要に迫られて現金化したのなら、経営がうまくいっていないのかもしれません。マイナスの場合はキャッシュが出ていく代わりに投資をしているので、これからさらに成長するかもしれません。
 財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、借入か増資でキャッシュが増えたことを示します。借入が増えるのはいい状況ではありません。マイナスだと借入を返済する資金の余裕が生まれたのでしょう。

さらに詳しく⇒『【4-44】キャッシュフロー計算書からわかること

減らすべき3つの勘定科目とは

「お金を増やすにはどうしたらよいですか?」という単純な質問に対して、「売上を上げる」あるいは「経費を減らす」と大抵の人は答えます。
 お金は企業にとって大事な命の水。お金の支払いが滞れば、仕入先からの納入も止まるし、家賃の支払いもできません。当然、給与の支払いが滞り、大変な状況を迎えてしまいます。
 左の図は、「貸借対照表」と「損益計算書」です。現金・預金を増やすには勘定科白の改善をする必要がありますが、そのためのわかりやすいテクニックをお教えします。
 左の囲の貸借対照表をみてください。資産の部の売掛金以下は、限りなくゼロに近づければ、お金が増えてきます。
 ただし、無形固定資産である「特許」や「商標権」などは積極的に増やすとよいでしょう。
 売掛金は、物を売ったのにまだお金をもらっていないわけですから、締め日をしっかり決めて回収しなければなりません。
 棚卸資産は、在庫になってお金が寝ている状態です。
 貸付金は、回収できないものが含まれていないかを念入りにチェックします。ゴルフ会員権などで、必要のないものは換金するほうがよいでしょう。
 いずれにしても、これらの勘定科目のうち、前述の3つを減らす計画を立てることも、経営計画のひとつです。

さらに詳しく⇒『【4-45】現金・預金を増やすには、勘定科目の改善を!

限界利益をもとにした売上と経費の図を活用しよう

 限界利益という概念について106ページで触れましたが、これを使うと「変動損益計算書」というものがつくれます。
 決算書の損益計算書としくみは同じですが、出てくる項目が「売上高」「変動費」「限界利益」「固定費」「経常利益」である点が異なります。
変動損益計算書を図式化すると「ストラック図表」(左の図)と呼ばれるものになります。この方が変動損益計算書よりも視覚的に把握できて理解しやすいので、ストラック図表についての解説をしていきます。
 ストラック図表では、まず売上高を変動費と限界利益に2分します。限界利益はさらに固定費と経常利益に2分します。固定費をより細かくみるときは「人件費など」「一般経費など」「金利など」「研究開発費など」に区分けします。
 この図表をみると、売上高から変動費を引いたものが限界利益であることがすぐにわかります。限界利益の中で固定費が占める比率が大きいほど経常利益が圧迫されていくことも、感覚的に理解できるでしょう。

さらに詳しく⇒『【4-46】ストラック図表とは?

固定費が図の下にはみ出したら会社は赤字

 ストラック図表を描いてみると、いくつかのパターンに分けられます。
 理想的なのは、変動費も固定費もそれほど多くなくて経常利益がしっかり確保できている場合です(左の図の@)。もちろんきっちり黒字を出しています。
 ところが変動費はそのままで、固定費が多くなっていたとします。そしてついに固定費が限界利益と同じになって経常利益を食いつぶしてしまった状態が、左の図のAです。損益分岐点が囲の一番下まで達し、売上高と等しくなっています。決算上は黒字でも赤字でもない状態で、このとき前項で紹介した「収益率」は100%になります。
 さらに固定費の比率が大きくなって限界利益を超えると、赤字会社になります(図のB)。中小企業の場合、固定費が多くなる理由として最も多いのは人件費が多くなっていることです。こんなときは労働分配率(104ページ)を計算して、人件費が増えすぎていないかどうかを確かめます。

さらに詳しく⇒『【4-47】ストラック図表で会社診断を

会計事務所と税理士事務所の違いは?

 会計事務所とのお付き合いは、どんなきっかけで始まったのでしょうか。たいていの場合、「銀行の紹介」「友人の社長の紹介」「親の代からの引き継ぎ」「顧問税理士紹介サイト」からなどが多いことでしょう。私は仕事柄多くの会計事務所を知っていますが、必ずしもすべてがすばらしいとはいえないのが現状です。「経営指導」や「経営計画指導」とホームページや看板に書いてあっても、手続き作業しかできない税理士さんもたくさんいるのです。
 ここではどんな会計事務所を選んだらよいのかをアドバイスします。ちなみに、会計事務所も税理士事務所も呼び名は違いますが、やっていることは同じです。最近では、税理士法人として、何人かの税理士さんがパートナーシップを組んでいる例も多くありますが、基本的には同じです。ただ、監査法人は上場企業の監査や上場に向けてのコンサルなどが中心なので、中小企業の場合、一般的な会計事務所で十分でしょう。

さらに詳しく⇒『【4-48】失敗しない会計事務所の選び方

社長本人も重要な経営判断の材料になる

 最後に、社長自身にヒアリングすることによる経営診断を紹介しておきます。ミッション、ビジョン、バリューといった経営理念や、決算書などの数値指標で会社を評価することも大切ですが、中小企業の場合は、特に社長自身が会社そのものといってもいいほどです。社長が会社をどうとらえているかを知ることは、その会社の現状と未来をみることになるのです。
 左の図でとり上げた経営診断は、社長や幹部を相手に会計事務所の担当者がインタビューをして、その答えをもとにして分析するようにつくられたものです。 分析結果は点数化します。それらを表でみることで、自分の会社はどこが強く、どこが弱いのかを社長自身も知ることができるようになっています。

さらに詳しく⇒『【4-49】 社長に聞く経営診断とは?

格付をする際に必要な要素とは

「格付」とは、企業を評価する基準となるもので、金融機関では融資を行う上での信用力を「与信格付」と呼びます。企業が融資を受ける際、金融機関がその企業を判定するために用いるものです。この格付により融資の可否や金利が決定されます。
 格付は大体12〜15項目にランク分けされており、各金融機関により異なります。また格付の要素は、定量要因と定性要因の2種類から成り立ちます。 まず、定量要因とは数量的に表せるもので、財務指標を中心とした分析です。主な項目は、安全性項目・収益性項目・成長性項目の3つです。基本的に、これらは決算書をもとに判定されます。したがって、よい決算書を作成することが重要となります。
 次に、定性要因とは数量的には表せないもので、金融機関が市場動向、競合他社の状況、経営計画、経営者などを分析してから評価をします。これらは決算書には反映されませんから、営業担当者や支店長が判断することになります。よって、日ごろの取引状況や人間関係が大切になってきます。

さらに詳しく⇒『【4-50】格付から経営状況を理解しよう